なんてかわいい表紙なんだろう。
体より大きなすずを肩からかけて得意そうな顔。背伸びをして猫の前足を早く早くとドアにぶつける。
開けて!

この小さな男の子。なにがそんなに得意なの?うれしいの?


ページをめくると左側に牛やヤギの首につけるすず。大きなのと小さなのと。右側にはスイスの高い山の麓の小さな村。静かなモノクロの見開きの絵に惹きつけられる。

優しく語りかけるようにこの物語の小さな男の子 ウルスリが紹介される。お母さんが紡いだヒツジの毛のとんがり帽をかぶって、勢いよくページからとびだしてくる。

明日は鈴行列のおまつり。
大きな男の子たちが大きな鈴を得意げに振りながら先頭にたって村じゅうをまわる。
鈴をならして、冬をおいだし、はれやかな歌声をひびかせて、またくる春を喜び迎える。
今年はどうしても大きな鈴をもらって先頭を進まなければ。今までみたいに小さな子と一緒になって行列のあとからついていきたくない。

もう小さな子じゃない!
なにがなんでも大きな子の仲間入りをしなければ。それも「いま」

子どもが強い意志をもって、おとなからみれば滑稽なほど頑なに頑固に足を踏ん張り主張する。
「もう 小さい子どもじゃない」

「チム」も「なほちゃん」もそしてウルスリも脱皮する。こどもの脱皮は、無神経なおとなには分かりにくい。
ウルスリのお父さんお母さん、村の人々のようにただ見守る事しかできない。

成し遂げた誇らしげなウルスリの顔。脱皮した顔だ。     mititi

『ウルスリのすず』
ゼリーナ ヘンツ文
アロワ カリジェ絵
大塚勇三訳

1973年 初版  岩波書店
6冊セット 函入り