IMG_0469
作家のトラヴァースは、アイルランド人の父、スコットランド人の母をもち、オーストラリアで生まれました。
そう聞くとなんとわくわくすることでしょう。 
アイルランドもスコットランドもケルトの伝承文化が根強く残っている土地です。
今なお アイルランドの田舎では「ちいさな人たち」を怒らせないように、人々は知恵をしぼって生きているという話を聞いたことがあります。



この世とあの世の境はなく、天地の間には人間の及ばない「なにか」が存在する。
過去、現在、未来は流動的であり風のように自由に行って帰ってくる。
生きとし生けるものは、生まれ変わりながらぐるぐると輪を描き あのケルト文様をつくりだす。

メアリー・ポピンズ は、バンクス家に乳母としてやってくる。東風とともに。
東風、西風と通じ、空に星をつくり、地上に春をもたらし、動物と話をする。
自分にほれぼれとするうぬぼれやでもある。ーーショーウインドウの自分の姿を見て「これほどスマートで際立った人はみたことがない」とうぬぼれる。

バンクス家の子どもたちの問いかけや質問にも一切答えず、容赦のない態度で子どもを拒否し、上向きの鼻をふふんとならし、嘲笑する。

メアリー・ポピンズのまわりには、たくさんのおもしろい人がいる。笑いガスのおじさん、キングコブラのいとこ、指をおるとアメの出てくるおばさん、月を飛び越えためうし(マザーグース)は母の友だち。
各章の話の不思議さおもしろさは、年をかさね経験をかさねより深く理解できる。

10章「満月」ただごとではない世界観だ。